先祖返り通信
2001年7月号 其の壱

会員の皆さんこんにちは。

 私はコバちゃん農場のあるじ・兼労働者である小林裕次です。今後、この通信の中でつれづれに私の伝えたいことを書いたり、皆さんのご意見を取り上げていきたいと思います。発刊ペースは月刊にしたいのですが、日々の忙しさのあまり今ひとつ自身がありません。季刊にならないようにがんばります。

「先祖返り」

 現在の日本では、花粉症、アトピー、喘息などの何らかのアレルギーを持っている人が国民全体の約3割になり、今やアレルギーが国民病なのだそうです。また至る所に蔓延している様々な化学物質に頭痛や吐き気などの症状が出てしまう「化学物質過敏症」になる新手のアレルギー反応も出ています。更に、その過敏症以上の症状で、生活の中で天然野生の食材しか食べられず、日常雑貨でも鉛筆などの昔の物しか受け付けない体質になる「先祖返り症」なる病名を持つ人もいるといいます。

 終戦後の焼け野原から50年以上の歳月が過ぎ、その間日本人は合理性、経済性を追求し続け、現在は落ち目とはいえ世界でも名だたる経済立国に変わりありません。
水道をひねれば飲み水が出て、スイッチ一つでいつでも電気が使える便利で快適な生活が当たり前のようにできています。そして、さらなる便利さ、豊かさを求めて開発、研究を続け、今では携帯電話なども生活の必需品のようになっています。

 この前テレビの街角インタビューでおネエちゃんが「携帯がないと生きていけない!」と笑っていました。
どこまでも際限な、くさらなる便利さ、豊かさが研究努力と引き替えに約束されていると思いこんでいるかのように。

 しかし、自然界の一部に過ぎない生身の私たちは、残念ながら限度という物があるようです。
私たちが求め続けている便利さ、豊かさのために研究室で作り出してきてきた成果である様々な化学物質を生身の体にとり続け、それらの体内残留量が個々人の許容量を超えた時点で、くしゃみやじんましん、咳、嘔吐などを通じて、これ以上の異物を体の中に入れないでくれと、体自身が訴えているとも言えるでしょう。
その内からの訴えを便利、快適のために科学的に作り出した薬で消し去ろうとしても良いのでしょうか。

 かくいう私も30歳を過ぎてからじんましんが出るようになり、医者に言われるがままにステロイド薬を飲んでいた時期があります。
 一時的に痒みから解放されますが、また痒くなる。それを繰り返し、痒みがひどくなってから薬を止めました。薬を止めた直後の痒みは更にひどい物でした。
しかし、薬を飲まなくなってから少しずつ症状が良くなってきました。
そして、大気中に蔓延している体にとっての異物から完全には逃れることはできなくても、直接体内に摂り入れる食べ物は健全な物にし、体の免疫力を高めたいと言う思いもあって有機農業を志しました。

 腰をかがめ、這いつくばっての草取り、虫取りなど、有機農業は便利さ、快適さを求め、農薬や化学肥料を使う現代慣行農法から見ると逆(昔)の方向へ向かっているようですが、有機農業を志すことによって、私はじんましんという形で内から出た「先祖返り」の要求に応えているのだと思います。
その成果はわかりませんが、今ではじんましんは出なくなっています。

 現時点では、私は近未来の地球の生活環境については残念ながら悲観的に考えています。
30年前には、ほとんど無かったアトピーがこれほどまでに一般的になり、これから先、先祖返り症と言う病気が珍しくなくなる頃には、すでに手遅れになったいるのでは無いかと思うからです。
地球全体が、蓄えない、捕りすぎない狩猟採集の先住民の生活レベルに戻れればよいのでしょうが、現実的にはそこまで「先祖返り」する事はできないでしょう。

 人は一度手に入れた「進歩」という名の便利・快適さをなかなか手放したくはないものです。
しかし、現在の進歩先進国の日本で、心を病む人が増え、我が子を虐待死させるなどの悲惨な事件が多くなってきているのは何故でしょう。

 これからは、勇気を持って少しずつ退歩することが進歩になるのではないかと思います。
少々難しくなってしまいましたが、私の「先祖返り」に込める気持ちを皆さんに少しでも伝われば幸いです。

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