先祖返り通信
2001年9月号 其の参

 あの暑かった夏は何処へやら。蝉の声から秋の虫の声に周囲は変化してきました。大型の台風11号の関東上陸の情報にびくついていましたが、直前で勢力が弱まり、大きな被害が出ずにすみました。一安心していたところ、キャベツ、ブロッコリー、大根などのアブラナ化の作物にシンクイ虫が大発生。毎朝、手やピンセットを使って小さな虫を捕ってはつぶす「虫見」と言う作業をするのですが、一番大切な作物の生長点を食い荒らすので、これからちゃんと生育するのか、結球するのか心配です。そして、きれいな声でなくコオロギ、ひらひらと優雅に舞うモンシロチョウやアゲハチョウも作物を食い荒らす脅威となります。まあ、良くこれだけ次から次へと難敵が現れるものだと思います。その中でどれだけ収穫できるのでしょうか。皆さん楽しみにして下さい。今回の通信の内容は、皆さんには良いことばかりでは無いでしょうが、どうか最後まで読んで下さい。お願い致します。


「提携の十箇条」

 今から30年ほど前、有吉佐和子の「複合汚染」が新聞に掲載され、日常の食べ物の安全性のついて警鐘が鳴らされ、多くの婦人グループが安全な食べ物を求め、第一次有機農業ブームが起こった。

当時、生産者と消費者の相互理解の上、労力や資金を出し合い、自主的な配送によって、生産者の拠点から消費者グループの拠点まで継続的に農産物を手渡していく活動を「提携」と呼んだ。

 そんな中で、有機農業研究会(71年発足の日本有機農業の中心組織)は、「生産者と消費者の提携の10箇条」を採択した。

ここでは全文を紹介できないが、そこには、生産者はできるだけ安全な食べ物の生産に努め、消費者は援農や見学などを通じて、再三の現場を理解し、顔の見える関係を維持しながら自立安定を確立することを目指している。

しかし、70年代の「提携」の関係は、次第に減少してきている。私のような近年の新規就農者で、当時の「提携」を全面に押し出して営農できている人はまずいない。

何故か。

 一番大きな理由は、有機農業も現在は「買い手市場」であるためであると思う。海外からの輸入も増え、手軽に有機農産物がスーパーなどで必要なだけ買えるようになり、消費者グループの参加、来てみなければ分からない旬の野菜セットでの食生活のなど煩わしい事は敬遠されるようになってきた結果だろう。

しかし、その便利な消費の陰で、流通に乗らない規格外などの生産物の廃棄、海外での無理な有機農産物の生産による農村の崩壊などの負の遺産はなかなか伝わらない。

 ここまで読んで、大体想像がつくだろうが、コバちゃん農場では、この70年代の「提携」関係への先祖返りを目指している。「買い手市場」への挑戦だが、真っ向からぶつかるとドンキホーテ同様跳ね返されてしまう。少しずつ、会員の皆さんの理解を得つつ前進(先祖返り)していけたらと思っている。

 10箇条の第一条に「生産者と消費者の提携の本質は、ものの売り買いの関係でだけでなく、人と人との友好的な付き合いの関係である。すなわち両者は対等の立場で互いに相手を理解し、相助け合う関係である。それは、生産者、消費者としての生活の見直しに基づかねばならない。」とある。まず、ここからだろうか。私は会員の方々のことを「お客さん」と呼ばないようにしている。「商品」を提供するサービス業者ではない、安全な「食べ物」の生産者としての捨ててはいけないプライドだと思う。

 開発途上国と言われる国々で5年間生活した経験から、残念ながら近い将来、世界的な食糧危機がかなりの確率で起こると思う。その時、自給率30%の日本はかなり危うくなるだろう。そうなれば、食料市場は、現在の買い手市場から売り手市場となる。その時まで農業を続けられていたら、会員の方々とは対等な立場で、食料を誠実に提供していきたい。それが、現在の買い手市場の中で、弱小な私を支えてくれる会員の方々への生産者としてのささやかな約束である。


お休みについて

 前述の「提携」おいて、消費者は畑の状況を理解して生産物を定期・継続的に受け取るので、消費者側も生産者同様、消費のお休みはありません。しかし、私のやり方は、できるだけ「無理なく」「先祖返り」する事なので、会員の方々に「休み無し」とは言えません。隔週などの不定期会員は、基本的にはお休みは自由です。毎週の定期会員についてはチラシの中で、私の都合でセット休みの時は、1回の休みにつき2000円引きます、とだけ書きましたが、定期会員側の都合でお休みしたいときは、どうするか。一月が4週でも5週でも同じ月会費なので、会員側の都合で2週や3週になっても、月会費に変わりなし、と考えていましたが、当面は、定期会員のお休みの場合、1回につき1000円の負担を頂くと言う方向でいこうと思います。(例・1回休みで月会費8500円が7500円)

 ただ定期、不定期どちらの会員の方にも理解して欲しいのが、畑の作物は、日曜もお盆もお正月も休み無く生育すると言うことです。決して人間の都合に合わせてくれません。また、経営的にもできるだけ毎週同じセット数を出していきたい。そうでなければ、安定的な営農はできません。(現在、余り野菜は、知人に送ったり、宣伝用に使ったりしています。)

 かといって、会員側も休み無くセットを消費しなければならないとなると、ストレスになるでしょうし、長続きもしないでしょう。徐々にで結構ですが、セットを休みたいときには、他にセットをとってくれる人を見つけるとか、どなたかの贈り物に当てるなどの方法を採ってもらえると助かります。そして、毎週だと食べきれないなどの理由で不定期会員の方も、セットを分ける方を見つけてもらい、定期会員に移行してもらえば、毎週新鮮なものが食べられ、私の方も安定的な営農が出きるようになります。ご理解、ご協力をお願い致します。


今月の先祖返り

 3年前、日本に帰国してから夏場は蚊帳(カヤ)を使っています。寝るときの耳元での蚊のブーン、ブーンと言う羽音や虫さされは寝苦しさを倍増します。前はベープマットや蚊取り線香を使っていたのですが、喉が痛くなるし、何せ殺虫剤。環境ホルモンも入っているだろうから体にも良いわけないし畑で使わないものを家で使うのも止めています。

確かに蚊帳は暑いかもしれないが無益な殺生もしなくてすむし、体にも良い。網戸にして夜風で寝るので夏風邪もひかない。

 現在、蚊帳は結構高値だが、有機野菜同様長い目で見れば高くないでしょう。是非お奨めしたい先祖返りの一品でした。


後記

 今回はずいぶん過激な内容になっているかもしれません。しかし日本の有機農業の現状を理解していただき、生産者、消費者繰法の将来の発展のため、どうしても伝えていかなければならないテーマなので早めに書くことにしました。

言葉足らず、表現力不足で誤解を生み、現在の会員数が減ったり、新会員の増加が難しくなるかも、との不安もありますが、信ずる道を進むのみ。

 次回のテーマでは「虫見(害虫殺し)」を予定してます。皆さんの感想、意見をお待ちしています。

そろそろ体を冷やす役割をもった夏野菜たちが秋の訪れと共に終わります。今年は苗作りに間に合わず研修先から苗をほとんどいただいてのスタートでした。それは立派な苗たちで、私と畑の土の未熟さをずいぶん補ってくれました。これからは当然自分で苗作りもしなければならず、ここからが本当のスタートなのかもしれません。

改めて、今後ともよろしくお願い致します。

<< 其の弐 <<     >> 其の四 >>


お世話になっている 高橋農園さんへのリンクです。

しいたけオオクワ産卵飼育用ホダ木しいたけ栽培セットアイガモ米
プロフィールしいたけの話おもしろ科学安全な食べ物リンク集