先祖返り通信 2001年10月号 其の四台風が去って一気に寒さがやってきました。朝、作業に出るときもう吐く息が白くなりました。
約2ヶ月がんばってくれたナスやピーマンなどの夏野菜がぱたっと穫れなくなりました(以外にもトマトが粘っていますが)。全般に、体を冷やす性質を持つ夏野菜から体を温める秋冬野菜が登場してきます。このバトンタッチが上手くできればよいのですが・・・。
虫見〜ベジタリアン戦争〜 「チョウチョ、チョウチョ、菜の葉に止まれ・・・」小さいときに歌った童謡。チョウは花の蜜を吸いに菜の花に止まりに来ると思っていたが、実は卵を産みに来ていたのだと、百姓を始めて、知った。大根、キャベツ、白菜、小松菜などの秋冬野菜の主力たちは皆アブラナかに属す。そう、皆菜の葉。チョウチョが止まるのだ。チョウチョの子どもの青虫はキャベツ、ブロッコリーの葉が大好物。青虫の他、ヨトウムシ、シンクイムシ(両方ともガの幼虫)が菜の葉が主食。放っておいたら、幼虫たちは「いただきます」「ごちそうさま」も言わずに植えた苗を食べ尽くしてしまう。そこで無農薬百姓1年生は黙っておらず、虫たちと対決する。毎日のように虫見をする。虫見とは、虫の観察ではなく、見つけ次第、野菜の生育の害になる虫を殺す作業。
今夏は暑く、雨が少なかったのでシンクイムシが多く出た。正式名はハイマダラノメイガの幼虫。これがアブラナ科野菜の芯・成長点に入り込んでバリバリと食べる。成長点を食われると成長しない、収穫できないということ。そして、成長点は小さく、柔らかく、丸まっているので、虫には格好の隠れ家であり、美味しさも抜群。指先大位の成長点に、体調1〜5mm位のシンクイムシ兄弟たちが5匹くらい食事をしている。手で捕まえられず、先の尖ったピンセットでつまみ上げてつぶす。こんな作業を繰り返しても、最初に植えたキャベツとブロッコリーはほぼ全滅。雨や配送で畑に入れない間も、生き残った虫たちは食べ続けており、虫見をしている最中にも、親であるガやチョウがひらひらと舞い、卵を産む。彼らも種の存続をかけ、卵を産み、葉を食らう。
中腰での虫見作業に腰を伸ばし、ヒラヒラと舞うチョウチョに茫然としながら、野菜の葉にカエルやクモがいると「ガンバレ!」と心の中で声をかける。でもカエルたちは、自然界ではどう猛な肉食。一方青虫はベジタリアン。仕事柄一人で週に1セット以上の野菜を食べるオイラとは、言わば同志。とは言え、オイラは時には、酒を飲み肉も食べる中途半端なベジタリアン。それが、野菜を守るため、完全なベジタリアンの同志たちを肉食虫の援軍と共に千匹以上は虐殺してきた。
作物を作ると言うことは、本当に人間本意の行為。命を守り、育てるためにものを食べるという自然界では、誰もがしている事をしているだけなのに多くの命が奪われる。人間に害虫と指定された虫たちは潰され雑草は引き抜かれる。
以前「野菜としての命」ということを書いた。それは野菜の命を人間の命を守るために多くの命の犠牲がその陰にあると言うことでもある。そのことを忘れないために、将来、より犠牲の少ない農法を見つけるために、ピンセットでつまみ上げた命を手に持ち替え、潰す。決して気持ちの良い行為ではない。指先に残る命の消えた(奪った)感触が命を作り、食べることをより強く感じさせる。収穫できた野菜は命のかたまりだ。だからこそ、無駄にすることなく食べたい。食べてもらいと思う。
基本的な野菜の保存方法 収穫後も野菜たちは生きており呼吸をしています。しかし、光と土から離れ、栄養源を断たれているので、野菜自身の成分を使って生きながらえようとします。このことが保存を考える上でのポイントです。
1)葉菜類は早めに使う
小松菜などの根の小さい、またはモロヘイヤや菜の花のような茎をかいて届く野菜は、収穫後の生命維持のための栄養源が小さいので長持ちしません。しかし、早めに使い切れない物は、新聞紙にくるみ、ポリ袋に入れ、冷蔵庫に入れるか、新聞紙にくるんで風の当たらない涼しいところにたてておく。2)畑にいた状態、姿勢で保存する
野菜たちは収穫後も光を求めて立ち上がろうとしたり、元の姿勢に戻ろうとします。もちろん、そのためにエネルギーを消耗します。できるだけ畑にいた状態で保存するように心がけます。3)日に干したり、漬け物にする
大根、人参、芋茎などは、日に干すことで甘みとビタミンB群が増え、保存食になります。漬け物にすると保存がきき、乳酸菌などの有用菌も採ることができます。
化学肥料やビニールを多用して早く成長する野菜より、分解の遅い有機質肥料を使い、露地でゆっくり育った野菜は、1つ1つの細胞が密でしまっており、比較的長持ちします。しかし、セットは基本的に1週間で食べることを念頭に置き、作っています。できるだけ新鮮なうちに食べてあげて下さい。各野菜の料理法、保存法は書き出したらキリがありません。私のアンチョコの1つを紹介します。
『野菜はともだち〜産直野菜の上手な食べ方』 農文協 1500円
この本の中では、私のような生産者の野菜を食べ続けている消費者グループが、その経験からいろいろな野菜の食べ方、保存方法が紹介されています。私の野菜を持て余し気味の会員の方にはお薦めの一冊です。野菜料理のバリエーションが増えること請け合いです。
今月の先祖返り
私の母はなかなか物を捨てません。破れたパンストを裂いて、編んで、室内履きを作ったり、空いた菓子箱に他の物を入れたり。亡くなったおばあさんは、もっと物を大切にしたでしょう。確かに今の時代、捨てないと身の回りがなかなか片付きません。だから、捨てればよいのでしょうか。自分の居場所が片付いた代わりに、どこか別の場所が片付かなくなってはいないでしょうか。物を捨てる前に、何か他の用途に使えないか、再び物としての命を与えてやれないかを考えるようにしています。ケチと言われようが少々格好が悪かろうが、実行していきたいと思います。工夫次第でいろんな廃物が農作業を続けていく上で、大切な役割を果たしてくれます。
物を大切に使う、もったいないと感じる母やおばあさんが持っていた感覚を取り戻すことが、将来の世代のために必要であると考えますが、どう思いますか。
後記
キャベツの苗を植えた翌日、見に行ったら1/4位コオロギに食いちぎられていました。植えた苗のまわりにコオロギのエサとなる米ヌカや腐ったカボチャをまいておけば、苗を食われないと舘野さんに教えてもらいました。次に苗を植えたとき試してみると確かに被害が減りました。何ともやさしい虫とのつき合い方です。さすが先輩です。
この通信を月初めに出すために、いつも期限ぎりぎりで書いています。日々の作業に追われているから、と言うのは言い訳で、ギリギリにならないと書けないと言う私の性分によるものです。そんな中、調べもそこそこに、あやふやな知識や聞きかじった事も書いてしまうこともあり、毎回気になる部分を残しての発行になっています。しかし、嬉しいことに今までは、読んでいる誰かが、その部分を指摘してくれています。
前に電子レンジは細胞を揺らす摩擦熱で食べ物を温めると書きましたが、科学的には不正確で、食べ物の中の水分子をマイクロ波が温め、そこからの熱伝導で食べ物が温まる・と言うことです。訂正します。
そんな不確かな事は、書かなければ良いのかもしれませんが、伝えたいことをより理解してもらうために、その道理、理由もなるべく書こうとする勇み足の結果です。電子レンジの場合、その一見便利な利用の裏にある電磁被害と言う不確かな危険性を伝えたかったのです。
野菜作りと同様に、100点満点にはほど遠い通信ですが、何か伝えたいと言う気持ちを感じてもらえたら幸いです。引き続き、ご指摘、感想を聞かせて下さい。では、また、来月。
コバ
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