2002年5月号 其の拾壱
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「ブーン、ブーン」4月の中旬、東京の八王子で季節はずれの真夏日を記録した週、我が家でも季節先取りのヤブ蚊の羽音に耳を疑いました。近所のお年寄りの話では、春が暖かいと冷夏になると言いますが、本当かな?と思ってしまいます。私は、中米生活時代に熱帯の蚊が媒介するデング熱というマラリアに似た病気に2度もかかりました。高熱と割れんばかりの頭痛を思い出します。
そしてこのまま夏を迎えると、デング熱等の熱帯病を運ぶ蚊が、日本でも発生するのではないかという恐怖をうっすらと感じています。すでに夜は蚊帳を使っています。
ばっかり食 日本一の長寿村で知られる山梨県の棡原(ゆずりはら)地方は、かつて交通の便と耕地条件が悪く、麦や粟等の雑穀、野菜や山菜を中心とした自給自足の食生活を余儀なくされていた。それが、都市への交通の便が良くなってきた現代、生活全般が便利になり、食生活でも肉や乳製品も多く摂れる「豊かな」ものになった。その現代、この地方で70歳以上の高齢者が畑で元気に働き、その次の世代である40〜50代の働き盛りが病気で倒れたり、先立たれる「逆仏(さかさほとけ)現象」が起きているという。
元気なお年寄りたちのかつての「不便」な時代、現代の厚生省で奨励する一日30品目の食生活を送れなかったのに、大した病気もせず、野良仕事に従事し、自分たちで作り出した食べもので頑強な体をつくり、健康に暮らせていた。それが今。自分たちより若い世代に先立たれるお年寄りたちの気持ちは、どれほどつらいだろうか。
オイラのこのひつ月の食生活を振り返ると、前半は菜の花、後半は竹の子が食卓に上がらない日はなかった。端境期で、セットを作るのに四苦八苦しており、食費もなるべく切り詰めている今の状態では、豊富にあるもので自分の食生活を維持することは、仕方のないことだ。時には、朝昼晩と同じ食材を味付けを変えたりして、目先を変える。でも飽きる。でも、今年の花粉症は去年より軽かったし、毎日の便通も絶好調。先日、一度では流れ切らん大物が出た。誰かに見てもらいたい衝動にかられた。体調はすこぶる良い。
棡原の老人たちのかつての食生活は、近くで取れるものだけで成り立っていたのだから、今のオイラと大差ないだろう。しかし、豊富な経験からひとつの食材を色々な調理法を駆使して「ばっかり食」を「〜づくし食」にしていたはずだ。
自分の行動範囲の中で、日々の糧を得ている野生動物に、食物アレルギーはなく、何が自分の体に必要なのか見極められる能力を持っている。一方、世界中から食べ物を集め、年中食べたいものを食べられる「便利な」現代食の中で、アトピーなどのアレルギー症状が生まれた。中国に「身土不二(しんどふじ)」という古くからの言葉がある。「人の体と土は二つではない、つまり人体とその風土は密接な関係がある」ということ。住んでいる四里四方でとれたもので食生活をしていれば、健康でいられる、と。
旬のものを豊富に食べることで、健康だけでなく、ヒトの動物としての命をつなぎ続ける本能が維持できるのではないかとも思う。何が生命維持に必要なのか、何が危ないのかが、あふれる「便利」の陰に隠されて分からなくなる前に、我が子を虐待する親が、化学物質過敏症等の現代の難病がこれ以上増えないために、ヒトの本能を取り戻したい。
「ばっかり食」は、決して「がっかり食」ではない。(栃木の快便児)
今後出るであろう野菜たち 4月のきつい端境期から、5月は少しずつ解放されるはずなのですが、二年目のジンクスか、おごりか、失敗した野菜が多くなってしまいました。そんな中でも、これから出そうな野菜たちは、
絹さや 穫れたての甘さは格別。味落ちが早いので、早目に使って下さい。スナックえんどうも同様です。 サラダ菜・
赤サニーレタス・
丸レタス丸レタスは、さっと炒めても汁物に入れても美味しいです。 葉物類 二十日大根や間引き菜は、ゴマ油とお酢だけで食べてもおいしいです。
今まで見たことのない葉物が入っていると、使い方がわからず、だめにしてしまった、という声を時々聞きますが、味に多少の違いはあれ、どれもお浸しや、汁の実等で使えます。
生で少しかじってみて、料理方法を考えることをお勧めします。ミニ人参 春まきの人参が大きくなるまでの間引き人参。大きい人参もそうですが、ミニ人参の皮をむいたら、食べる所がなくなってしまいます。皮をむいたり、細く刻んだりすると、切り口から酸化するし、味も逃げます。小さいものは、切らずにそのまま煮たり、炒めたりすれば、食べた時人参の香りが口いっぱいに広がります。
その他、大根・キャベツ・ブロッコリーそして月末頃には、お待ちかねの玉ネギも登場することでしょう。
今月の先祖帰り 先月の末頃から、何の前ぶれも無しに、大きな葉物やカブがセットに入りました。雨が降らないので、湿気の強い畑に葉物をまいたせいか、生育せず、いよいよセット作りが苦しくなった時、となり町で有機農業を営むリベルテ農園で、葉物が余っているというので、遠慮なくいただいたものでした。リベルテさんの葉物を収穫すると、色々の形の葉をしたものが混ざっています。開くと、以前の小松菜から自家採種したためと言います。私の農場でもそうですが、菜の花の時期になると白菜・小松菜・キャベツなどの様々な花が咲きます。これらは、皆アブラ菜科の同族で、昆虫や風で花粉が混じる「交雑」という現象が起き、次世代の種は、隔離して採取しない限り、他種とのハーフやクオーターの形質を現してしまいます。しかし、リベルテさんの葉物やカブは、食べる分には何ら問題のないものでした。
種会社では、農家や消費者のニーズに応えるため、外見の統一性や耐病性、味覚的には甘み、柔らかみなどのある品種をつくるために、同族の中で、求める性質が出るように独自に「交配」させ、一代限りその特質の出る種(F1種)を作り、販売しています。私もそうですが、ほとんどの農家は、このような種苗を買って、作付けをしています。この交配種から自家採種すると、その親の性質を持つ種が出てきます。これを繰り返すことで、段々と種の性質が固定されます。種の先祖返りです。
私の農場でも、今年からカボチャやキュウリ等昨年種取りしたものを実験的に少し作付けしてみます。手間のかかる、形質が安定しない、一時的に病気に弱くなる等の短所もありますが、その土地に適した性質の種ができる、種代の節約になる、何より農家の手に種を取り戻すことができる、という長所があります。瓜類の他にも、今年は自家採取しやすい固定種をいくつか買って、作ってみます。しかし、私だけのための野菜ではないので、徐々にコバ種を増やせていけたらと思います。
今後のためにも、会員の皆さんの忌憚のないご意見を聞かせて下さい。
後記 連休後、様々な困難をくぐり抜けてきた夏野菜の苗たちが畑に巣立ちます。悪い虫がつかぬよう、病気にならぬよう、気をつかって育ててきた苗の嫁入りです。去年、農業の研修からいただいた苗に比べると、器量が悪いですが、やはり自分で育てると、それでもかわいいものです。人間の嫁入りと違うのは、巣立った後も悪い虫がつかないか、ちゃんと花を咲かせ、子供(果実)を作るか、まで毎日のように世話をし続ける執拗な親馬鹿ぶりが求められることです。その最愛の娘たちの愛の結晶を皆さんにお届けできるのは、来月に入ってからでしょう。お楽しみに。
先月のセット野菜の質と量をみて、気をもまれた会員の方も多かったことでしょう。でもどうにか10種類を切らずにお届けできたのは、快く竹の子を掘らせてくれた高橋さん、舘野さん、葉物を分けて頂いたリベルテさんのおかげです。ありがとうございました。
会員の皆さんも、セットに入った老齢期の野菜や使い慣れない保存野菜に戸惑われた方もいると思います。私の未熟さからの失敗もありますが、季節のサイクルに合わせた野菜つくりでは、端境期に質量が落ちること、年間を通じてのトータルのおつきあいをご理解頂けると幸いです。長い目で見て「コバちゃんの野菜を食べてて良かった」と感じて頂けるよう、引き続き精進していきますので、今後も良い点も悪い点も正直に教えて下さい。悪い点を指摘することは、気持ちの良いものではないでしょうが、そこの部分が伝わってこないと、目指す相互理解、「提携」関係(其の参号 参照)になかなか近付けません。私もできるだけ自分をさらけ出しますので、お届けする野菜や通信についての率直な感想をお待ちしています。
百姓一年生を振り返り、今強く感じているのは「有機農業は、本当に大変だけど、本当に面白い」ということです。では、又。
コバ
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