2002年10月号 其の拾五
![]()
暑さ寒さも彼岸まで。朝晩は暑さから寒さへの移り変わりを感じさせる今日この頃です。今年は台風の当たり年でもあるようです。 多勢に無勢 キャベツやどの菜の花系の野菜の周りをヒラヒラと飛び、卵を産みつけているチョウチョウたちは、多勢。野菜を食い尽くす勢いのチョウや蛾の幼虫を地に腹這になるように探し潰すオイラは、無勢。無数の種を落とし、一雨毎に破竹の勢いで伸び、野菜に覆いかぶさる雑草は、多勢。鎌や機械を使い、雑草を刈り、抜いていくオイラは無勢。それらは序の口の相撲取りが、横綱に挑むようなもの。
前号で草の恐さは書いたが、虫も去年よりひどい。8月中に蒔いた小松菜や大根などのアブラ菜科野菜は、ほぼ全滅。頻繁に虫見(虫潰し)をしているつもりのキャベツやブロッコリーも、正常に生育しているのは極わずか。虫にとっては、お菓子の家のような野菜の成長点に入って食事する蛾の幼虫は、1ミリにも満たないような時に駆除しないといけない。幼虫が5ミリ位に太った頃は、成長点は無くなっているからだ。そうなるとスーパーに並ぶようなキャベツにならない。だからピンセットを持ち、さながら外科医のように小さな腫瘍ならぬ幼虫を探り、つまみ出し、潰す。オイラの規模でも虫の出ている所でこの作業を丁寧にやれば丸一日はかかる。そんな状況でも、時期を外せない種まきや苗の植え付けなどの作業も目白押しなので、虫見にそんな時間はとれない。次々にだめになるのをどうすることもできず、ジレンマを感じる。長年農業にもまれている農家が、殺虫剤や除草剤の農業に向かう気持ちが痛いほどわかる。
では農薬を使う農家が、ただ楽な道を選んでいるのか?とんでもない!
昨今農薬の環境ホルモン等にかかわる危険性が話題になる。極微量で生体のホルモン作用を乱し、アレルギー、不妊、癌などの原因になる。でも誰が一番危険なのか?
農薬をまく農民が食べる人の約千倍の被爆量だという。農家のそんな危険な積み重ねを経て、スーパーに並ぶ野菜や果物は、食べる方も死ぬ気で食べて下さい、と舘野さんが毎月やっている有機農業講座で言っていた。殺虫剤や除草剤を喜んで使っている農民はいないだろう。では、なぜ農薬を使うのか?もちろん手で取ったり虫を潰したりするより楽だからというのもあるだろう。しかし、なによりも消費者が求める安く、見てくれの良い食べ物という商品を作るために使うのだと思う。農薬の乱用の槍玉にあげられるのは、少数の農民側だが、大多数の消費者側の志向が農薬を使わせていることに気が付いている人がどれ位いるのだろうか。ここにもまた「多勢に無勢」がある。農地で安い農作物を大量に作るためには、工場のような効率化が必要になる。まず、作物を単一化し、機械化する。耕作地の回転を早くするために、早く大きくなる栄養剤である化学肥料を使う。単品を生産する場所が大きくなればなるほど、そこは不自然な場所となり、その単品を好む害虫や病原菌が土の内外に増える。消費者が求める農商品をつくり続けるためには、殺虫剤や土壌消毒剤を使わざるを得なくなる。一度単一化すると、そのための機械や資材に資金を投入しているので、他の作物への転換は簡単に出来ない。また、同じものを作る。害虫や病原菌は、前の農薬に耐性を持つようになるから、その都度、更にきつい農薬を使わねばならない。そんな最中でも、消費者は更に安いものを求め、その要望に応えるべく、商社は更なる効率化ができる規模と安い労賃の海外で、日本の消費者向けの農作物を作らせ輸入する。そうなると日本の農家はどうなるの?海外の農地、農民はどうなるの?
またこんな数字をある環境問題の講演会で聞いた。「世界では約5万人が毎日餓死し、日本では約5千万人分の食糧を毎日廃棄している。」この数字的根拠には、少々?だが、少なからず驚かされた。その食糧の6割をすでに輸入に頼っているのに、どこぞの難民救済のためにコンビニの募金箱にお釣りをチャランと入れるより、この国で食べものを大切にする人、コンビニエンスに頼らない人が多勢になることの方が、余程の救済につながると思うんだけど。
先日、近所のフリーマーケットに出店した時、売れないオイラの野菜を見て、キャベツを出荷しているという農家のおばちゃんが「馬鹿だなあ、にいちゃんは。こんなのは自分で食べる分だけ作って、売るのは薬使ってきれいなの作んなきゃ、ダメだろが!」と話しかけてきた。「そうだね」と笑って答えた。この斜陽な日本の農業の中でも、オイラは無勢、おばちゃん達は多勢だ。そのおばちゃん達も海外の大規模農家からみたら無勢となる。この構図を作っているのは、多勢の日本の消費者でもある。
最後に書く。虫見をして、様々な虫を殺す。潰した時、虫の液体が顔にかかる時もある。スプラッシュムービーのようで、気持ちの良いものではない。でも、殺す時はできるだけ手で潰す。「殺す」ことをより実感する。「生きる」ために「殺す」こと。良いのか、悪いのか、この生きたいものを「殺す」ことで、「生きる」こと、収穫できた「食べもの」をより大切にしたい気持ちが強くなる。家の中をウロウロするゴキブリを今では叩く気になれない。
農薬は大量破壊兵器を使った戦争。虫見は侍が刀で命を取り合った戦に近いものがあるように思う。「生きる」ことを軽視したような事件が多発する日本に、無勢なオイラのような戦も必要だと思うのだが(栃木のいち消費者)
今後出るであろう野菜たち 秋になり、気温が下がってくると、ナスやピーマンなどの夏野菜が序々に穫れなくなってきます。そして、里芋、さつま芋、人参、大根など土の中に育つものが穫れるようになってきます。10月はその入れ替わりの季節。半袖から長袖に服装が変わるように、食べることにより体を冷やす野菜から、体を温める根菜類を代表とする秋冬野菜へと移行していきます。本来、自然のサイクルと体のサイクルは見事に一致しています。
葉人参や葉大根が人参や大根になるのは、月末位だと思います。そして小松菜などの葉菜類も少しずつセットでの割合が増えてくると思います。出始めの頃の葉物は、今春自家採種したものです。やはり他のアブラナ科と交じり、色の濃いもの、うすいもの、葉の形がちがうもの、根が太くなるもの等々、形状にばらつきがありますが、食べる分には問題ないと思います。気がついたことがあれば、ご指摘下さい。
後記 彼岸に、東京へ墓参りに行きました。久しぶりに人ごみの中を、アスファルトの上を長い時間歩き、畑仕事にはない疲れを感じました。携帯電話が体の一部になっているのかと思える若者たち、上野公園でのブルーシートの家の密集、外食産業の多さ、パチンコ台の前の表情のない顔、顔、顔。たまに都会に出ると、また違った感性を刺激され、興味深いものです
季節の変わり目です。皆様呉々もご自愛下さい。
<< 其の拾四 << >> 其の拾六 >>
お世話になっている 高橋農園さんへのリンクです。
| しいたけ| オオクワ産卵飼育用ホダ木| しいたけ栽培セット| アイガモ米|
| プロフィール| しいたけの話| おもしろ科学| 安全な食べ物| リンク集|